■「はじめに」の書き方
- 「はじめに」は全体の要約。退屈な前振りではない。
- (短い)背景、問題意識、アイデアの要点、次章以降の構成、を順に述べる。
近年の計算機技術の発展に伴い、分散FSの重要性が増している。分散FSは重要なビジネスの現場で使われ始めているので、XXX性能の改善が急務である。XXX性能を左右する原因は...典型的な悪い書き出しでは、ごく一般的なことを、さしたる科学的・技術的裏付けもなく主張して、なかなか本題に入らない。よい論文の書き出しでは、裏付けのない一般論にふれてはならない。代わりに、その技術分野の現状を客観的にまとめ、すぐ次の段落で、その論文が解く問題をできるだけ厳密に提示するのがよい。厳密に、というのは、大風呂敷を広げすぎて、その論文の解法では解けもしないことが、あたかも解けるかのような書き方にならないように気を付けよ、という意味である。
上の悪い書き出しを直すとすれば、例えば次のようになるだろう:
「現在の分散ファイルシステムでは、XXX性能をあまり高められない。なぜなら、YYYとなっているため、ZZZだからである。」
■「問題意識」の書き方
- 例を効果的に使い、要点をわかりやすく
- 理想的には、ここで従来技術ではうまくいかない例を示し、後に研究のアイデアを示した後、そのアイデアを使うと、同じ例がうまくいくことを示せるとよい。
- 例の選び方は、論文の質を左右する
- 簡単で、問題点が浮かび上がるような例を。
関連研究の多い分野では、あらかじめ関連研究のレビューをしてから問題意識を説明したいかもしれない。例えば、「この分野には、~という問題がある。これを解決するために、~という方法が提案されたが、これには~という欠点がある。そこでこの論文では、この欠点を回避する方法を示す」という流れにしてしまいがちである。
だが、とくに学会発表論文では、その分野の研究者が相手であるので、関連研究のレビューはごく手短にして、直接、その論文で扱おうとしている問題を説明する方がよい。個々の関連研究とその論文の研究との比較は、後の章でふれればよい。